東電OL殺人事件 点と点がみるみる線になる恐怖の実態 (4)

再び佐野眞一による
「東電OL殺人事件」から抜粋してみます

 

 「客」として彼女と二年間つきあった

五十代の男によれば

彼女は東京電力につとめていることを

異常なほど誇りに思っており

電力こそ日本経済を支える

最大不可欠の原動力だ

熱っぽく語るのが常だったという

ちなみに慶応大学経済学部を

優秀な成績で卒業した彼女は

東洋経済新報社が主宰する

民間経済学者・高橋亀吉賞の応募でも

佳作に入選したことがある

・・・中略・・・

 

 

ホテルに入り

レギュラー缶二本

ロング缶一本のビールを飲みながら

四十分間 経済論議ををするのが

彼女のいつもの習わしだった

あるとき彼女の「客」だった五十代の男が

東京電力は大企業の電力料金を

ひそかに割引きしているのではないか

大企業はその浮いた分の資金を

政治献金に回しているのではないか

と冗談めかしていったことがあった

すると彼女は

ふだんめったにみせない

感情をむきだしにして

「東京電力はそのような不正は

断じてしておりません」

怒りながらきっぱり言い切った

 

これを真に受けるとなると
非常に複雑な心境になります

反原発の態度をとりながら
会社への忠誠心も示す泰子さん

父 達雄さんは 死ぬ間際も
東電に忠誠を誓っていたのだろうか?

取材する側は
まじめに彼女のキャラクターを探ろうとしても
聞く相手によって
いや もしや同じ相手であろうが
日が変わるごとに
映画「羅生門」のように
コロコロコロコロ藪の中を転がされるような
そんな感覚だったのではないだろうか?

社畜でありながら反原発の態度を貫く姿は
「矛盾」と呼ばないのだろうか?
とするなら 彼女のような社員は
他に何人かいたのだろうか?

入社当初は張り切って
残業も厭わなかったのだろう彼女は
ある日から突然定時退社し始めます

報道を鵜呑みにするなら
それは1989年
エリートコースから外れた場所へ
出向させられた翌年です
「立ちんぼ」での売春行為は
この2年後 1991年から始まり
平日は東電本社の最寄駅
地下鉄銀座線の新橋から
乗り込んで渋谷駅で降り
109の女子トイレ厚化粧を施し
頭にはウィッグまでのせて
大企業のOLとは別人格となって
円山町界隈を縄張りとするのを
終電間際まで毎日欠かさず繰り返し
休日も身体を休めることなく
風俗店へ顔を出し
指名してくれるをひたすら待つ生活

本業であるはずの東電での仕事中に
疲れすぎてウトウトしても
誰一人注意してくれる仲間もおらず
周りのみんなは実は
彼女が身売りしてたということを
薄々感じていたという幾つかの証言

あることないこと書かれて
ノイローゼになっていたという彼女の母は
ついにマスコミへ抗議文を提出するも 実は
娘の毎夜の売春行為を
単に見て見ぬ振りしているだけだった
という証言を裏付けてしまうのが
毎夜終電で帰ってくる泰子さんの帰宅姿
厚化粧とウィッグをかぶった
109で変身後の別人格のままだった
という証言

毎日4人以上をノルマとし
見知らぬ男たちと身体を接触させていた彼女は
本当は潔癖症だったという証言

平社員である頃から
お茶汲み的仕事を彼女だけは
頑ななまでに拒否し続けていたという証言

東電内にいる間は
ほとんど誰とも喋らず
誰とも食事などせず
まともな食事自体の目撃情報さえなく
典型的な摂食障害を起こしていたという証言

会社のデスクの引き出しには
ワープロ作成された
顧客たちへ向けた売春行為申込書
ホテルに対する詫び状
(汚物で部屋を汚した際のものだと思われる)
が見つかったという証言

数万円の時もあれば
2000円で引き受ける場合もあった
売春行為で得た金額は
総額1億円にまで膨れ上がり
全てを銀行に預けているという証言

いったいどれが真実に近く
どれがデマなのだろうか?

もし そもそも彼女が身売りしていた
ということ自体がデマだったなら
これまで両目をギラつかせて
読んだり聞いたりしてた
スキャンダラスな報道内容の半分以上が
脆くも崩れ去ってしまうのですが・・・

そんな時
「影絵」というブログを見つけました

その中に
「文藝春秋」(2001年6月号)へ
椎名玲という女性ライターが寄稿した
『現代のカリスマ 円山町OL
寂しい女たちの「教祖」になるまで』
と題された記事の抜粋があったので
こちらでも紹介させてもらいます

渡邊泰子が殺害されるまでの約2年間
彼女と同じ終電によく乗り合わせ
(渋谷発0時34分吉祥寺行き最終電車)
彼女の自宅の最寄駅
京王井の頭線の西永福駅(渡邊家から徒歩5分)で
椎名さんも一緒に降りていたらしいのです

 

① 終電の最後尾より

二両目の後方ドア前が定位置だった

② 何度か 車中で酒のつまみのようなものを

むさぼるように食べている姿を見かけた

③ 黒いショルダーバッグを

ゴソゴソとかき回して口紅を取り出し

電車の窓を鏡にして

唇の輪郭からはみ出すのを気にせず

口紅を塗っていた

④ 故鈴木その子のような

真っ白い化粧と真っ赤な口紅は

どこかレトロ

生気のない顔を作りあげていた

腰までありそうな長い髪の鬘をかぶり

けだるくため息をつく

トレードマークのように

真冬でもバーバリーのコート姿

コートの前はとめることなく

中の洋服が見えていた

印象的なブルーのツーピースを好んで着ていた

⑤ 走る電車の窓を見ながら

よく笑みを浮かべていた

不思議な人だった

お世辞にもきれいとは言えないが

現世に魂がないかのようで

異質な吸引力があった

⑥ 電車の揺れで

ころびそうになった彼女を

支えたこともあったが

驚くほど軽い

足に包帯を巻いて辛そうに立っていた時も

「大丈夫ですか」と声がかけられない

やすやすと声をかけることができない

次元の壁を彼女から感じていた

⑦ 彼女の異変に気が付いたのは

殺される半年ほど前からで

さらに激痩せして 頬の肉は削げ落ち

首筋が浮かび上がっていた

コートの下から見える足も異常に細くなって

いまにも折れそうだった

電車にゆられていると

呼吸さえも苦しそうに見えた

自宅のある西永福駅に到着し

電車から降りたとたん

強風に煽られて反対側のホームの下へ

落ちそうになったこともあった

⑧ 一度 彼女の手に偶然触れたことがある

体温がまったくないような冷たい感触

この先この人は

生きていけるのだろうか 

胸騒ぎを感じた

 

(5)へつづく

 

(3)はこちらから

 

 

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